日記。

日々の徒然を書き留めてます。

祖父の死④

10/22(土)

午前3時起床。ダラダラスマホを眺める。日に日に体力がなくなっていくことを感じる。まずご飯をちゃんと食べていないし、頭に浮かび上がるたびに泣いているからそこでもエネルギーを消費している。何か食べなくては・・・。ゆっくりと起き上がって外に出た。やっぱり夜の空気は心地いい。根がビビりなので人がいるとエネルギーの何%かをその人に費やしてしまうから、誰もいない真夜中はのびのびできて本当に好きだ。祖父のことを考えながら歩く。駅前の松屋へ入りカルビ丼を注文。美味しい。家に戻る頃には太陽が顔を出していた。歯磨きをして就寝。2階で飼い犬が吠えているけど、今日の朝の散歩は父親に任せよう。f:id:gaku-diary:20221030070721j:image

昼過ぎ、のそのそと祭儀場に行く。明日が通夜で明後日が告別式だ。祖父の遺体は明日より道路の向かいにある式場に移される。変な言い方になってしまうが、遺体が一般公開されることになるので、親族だけで祖父を囲めるのは今日で最後だ。ああ、やっぱりこの部屋は苦しい。

夕方、父、兄、妹と喪服を購入しにイオンモールへ。そういえばこの4人ででかけるのは僕らが全員小学生の時以来だ。車を停め入り口に向かおうとすると何やら騒がしい。駐車場の一角でビールフェス的な何かが開催されていた。父は「よし、ここで何か食おう。喪服買うのにも採寸とかで時間かかるだろうし、ビールも飲もう。」と言った。空いているテーブルを陣取り、各々父を持ち寄り焼きそば、牛串、後なんかよくわからないビールを購入した。4人でテーブルを囲ったはいいが、我が家のコミュニケーションは母を軸に展開される。妹が母に聞いて聞いてと話を持ちかけ、兄がそれにちょっかいを出して僕がクスクス笑う、という一家団欒の方式を採用しているのだが、今ここに母はいない。明日お通夜なのにさっそくお通夜みたいな雰囲気だった。

平均年齢30歳の一行がスーツ店に入る。喪服は大学の入学式のときに来た紺色のやつでいいかなと思ったが、せめて親族はちゃんとしたやつを着ろと怒られた。僕の採寸を測るとき、身長に合わせたズボンがブカブカすぎて兄と妹が大爆笑していた。薄っっっす!って。ここ3日合計で3食も採ってないからそりゃ痩せるわ。

今日は仕事(夜勤)に行くつもりだったので、駅に近い祖父の家で下ろしてもらった。真っ暗な部屋。明かりを点けても誰もいない。ああ、まただ。涙がこみあげ、うずくまって泣いた。本当に疲れた。これが親族の死か。寂しい。悲しい。鉄の球が心臓からぶら下がっているようだ。胸が重い。耐えられない。

だから、僕は祖父に話しかけてみることにした。誰も座っていないソファに向かって、「おじいちゃん」と声をかけてみた。当然何も返ってこないが、記憶の中には祖父と交わした無数の会話データがある。僕がおならしたら決まって「落としたもん拾ってけ」って言ってくるし、鼻をほじってたら決まって「それどこにやるつもりだ?」と返してくるし、後ろから髪の毛をこっそり触ったら「うるせえこの野郎!」って怒鳴ってくる、これらのようなお決まりのフレーズがいくつもある。だから、「おじいちゃん」と呼びかけたら間違いなく次には「どうした〜?」と、少し間延びした返事が返ってくることがわかる。おかしなやつだと思われるかもしれないが、僕は以降ずっと1人でおじいちゃんに話しかけていた。

「死ぬの早くない?」「痛くなかった?医者曰くほぼ即死って言ってたけど本当?」「お母さんが一番つらいはずなのに、今すごい気丈に振る舞っているよ」「でも俺、なんかそろそろ死ぬんじゃないかって思ってたよ」「このビルどうすんの?まさか本当に市に寄付するつもりじゃないよね?」「あ、あの灰皿もらうけどいいよね」

僕は極めて冷静だ。だから本気でおじいちゃんがそこにいるとは考えてない。しかし、このイマジナリーおじいちゃんと話すことで気持ちが楽になったのは確かだ。少なくとも、寂しい感情はだいぶ緩和された。

家を出る間際、和室の奥にある仏壇に見慣れない白黒の写真があるのに気づいた。左には元々あった祖父の母親の写真。初めて見たのは右にある、着物を着てマフラー(?)を身に着けている初老の男性。ひょっとして・・・「おじいちゃんの父親?もしや、ひいおじいちゃん?」今度はイマジナリーひいおじいちゃん誕生だ。

生前祖父から聞いた話だと、ひいおじいちゃんは祖父が1歳の時に亡くなってしまったらしい。僕は懲りずに、今度はそのひいおじいちゃんの写真に話しかけた。「ひいおじいちゃんが早くに死んじゃったから、おじいちゃんは父親というものを知らずに父親になっちゃったんだよ、すごい苦労したと思う」何か文句がでてきてしまったが、それでも付け加えといた。「でも、おじいちゃんとしては本当に良かった。色んなもの食わせてくれたし、色んなところに連れていってくれた。たまにおかしなお金の使い方してくれるおかげで、貴重な経験もたくさんできた。いつも笑顔でおどけて、たくさん可愛がってくれて。孫の1人から言わせてもらうと、立派なおじいちゃんだったよ。」