6/25(土)05:30〜
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4時半、始発に乗り彼女の家に向かう。手が震えている。正直、行って何がしたいのか自分でも分からなかった。抱き合っている男女を見て、ただ情動に従ったら殺人を犯してしまうのではないか。それは絶対嫌だった。大好きな家族、友人を悲しませたくはない。俺が犯行に及ばない理由はその唯一かもしれない。良好な人間関係こそ犯罪抑止の安全綱だ。
じゃあ何だろう。行って俺は何をするの?謝罪を要求しても、起こったことは無くならないし無駄じゃない?それに謝罪する行為っていうのはその人と付き合い続ける意思表示にもなるから、もう俺と別れるつもりなら彼女は謝り損だな。
明らかに非合理な行動だ。目的も何もない。ただ情動に従っているだけ。めちゃくちゃ寝不足だったけど、ここ数年で1番元気だった。
5時40分。到着。震える手でタバコに火をつける。いつもの3倍は早歩きだ。何も考えられない。足だけが息をしている。
まだ吸い切ってないのに家に着いた。合鍵を使い扉を開ける。
あーーーーーーーーー。
いつもと違う場所にあった歯ブラシを取り出しシャコシャコしながらご近所さんを優しく起こす。
「あ、おはようございます〜。あの、彼氏です!笑」
結構イケメンで身長も高い人だった。彼女も「怖い〜〜!」と言いながら起床。
もうそこからは脳を使ってない。起こったことを書くのが難しすぎる。覚えているのはひたすら彼らを笑わせたことくらいだ。ご近所さんの年齢聞いたり、LINEを交換してこのブログを紹介したり。だって何していいか分からなかったんだもん。お笑いのゾーンに入ってたと思う。まあ状況的に何をしても面白くできる自信はあった。「彼氏くん面白すぎる〜!」ありがとう!!その言葉が今一番嬉しいよ!もっと面白くしてやるよ!「まあ安心しろよ〇〇(彼女の名前)!俺お前と付き合ってから既に3人の女とヤってるから罪悪感持つことはねえぞ!」皆んなが腹を抱えて笑った。常識も倫理もあったもんじゃない。空気が加速する。ここでは俺が圧倒的に被害者で、どんな暴力も許される気がした。かつてない全能感だ。そうだ、写真撮ろうよ。彼女の髪をひっぱり無理矢理ツーショットを撮る。一番年下で納税額も少ない俺が、3人しかいないこの世界で独裁者になった。
約1時間。大晦日よりも笑って、流石に疲れた。疲れたら、ご近所さんがなんだか可哀想に見えた。本当ごめん。すごく居ずらいと思う。帰っていいよ。ごめんね。顔が映ってる写真は全部消しとくよ。気を付けて帰ってね。ばいば〜い。
さてと…