日記。

日々の徒然を書き留めてます。

インド旅行3-5

3/4(土)13:00〜
逃げるようにタージマハルを後にする。大通りに向かって歩いていると関連した土産店が並ぶエリアに入る。特に欲しいモノはなかったのでそのまま素通りしようと思ったが、小石が散りばめられたネックレスを持った1人の男が話しかけてきた。『これどうだ?』いらね〜と思ったが、そういえば彼女への土産をまだ買ってない。ひょっとしたら似合うかもしれない。「いくら?」と聞くと『500ルピー』とのこと。日本円ですると約800円。お手頃価格だ!(インド2日目の男)と思いその場で支払った。タスクを消化した気になって意気揚々と歩いていると、全く同じものを持ったおじさんが『これも買ってくれ!』と僕につきまとった。いやもう持ってるしいらんわ。適当にあしらうもこのオジ、なかなかしつこい。普通の人なら辟易するところかもしれないが、この時僕はどこまでついてくるのか気になってしまったので、買う素振りを見せながらもズンズン歩いた。歩いて約3分。もう出口も近い。あと10mまで進んだとき、しびれを切らしたようにオジが叫んだ。『100ルピーーーーー!!』そんなに安くできたのォ!?力尽きたオジは背景に溶け込んでいった。てか、100ルピーまで値下げされるのを知るくらいだったら早々に断っておけばよかった、くそ。値切りの重要性を痛感した瞬間だった。
さーて、この後どうしようかな。帰りの電車は18時発だ。一旦アーグラ駅に行き場所の確認をすることにした。これは持論だが、旅行を進めるうえで最も重要な工程は移動だと思う。日程を立てる段階で、観光地やレストラン、ホテルなど、目的地の選定に目が奪われがちだが、それらを全て可能にするには移動がちゃんと成されていることが大前提だ。移動という工程にかかる比重は他の要素とは比べものにならないほど重い。まあ午前中に移動失敗したんだけどね。
リキシャドライバーに300ルピーほど渡して駅で降ろしてもらう。たしかにアーグラ駅だが、まだ油断ならない。木陰のベンチでボーッとしているおっちゃんに声をかけ、この駅で合っているか電車のチケットを確認してもらった。それが僕とカーンおっちゃんの出会いの始まりだった。
僕とカーンは意気投合、というわけではないが、そのままベンチで話しこんだ。名前や家族構成、果ては宗教と生き方まで。『いいか、ハートの声に耳を傾けろ。頭じゃない。頭が死んでも人は生きていけるが、心臓が止まったら人は死ぬ。大事なのはハートだ。』そう言ってカーンは、僕にリキシャドライバーにいくら払ったのか聞いてきた。『それは高すぎる。地元民ならせいぜい20ルピーで乗せてもらえるぞ。着いてこい』歩き出すカーンとそれを追う僕。ちょっとおっちゃん!待ってくれ〜涙
カーンは、止まっている数々のリキシャドライバーとヒンディー語で会話する。ドライバーの中には、『わけがわからない』といった顔でカーンを追い払う仕草を見せる者もいた。5、6人には声をかけただろうか。ようやく乗せてもらえるドライバーが見つかり、10分ほどかけて市街地まで移動。降りるとき、カーンが僕に『10ルピー出せ』と言った。言われたとおりにすると本当に20ルピーで済んだ。おおお。普通ならここはカーンの優しさに感激するところかもしれないが、その時の僕はなんとも言えない表情をしていたと思う。たしかに、間違いなくカーンは”いい人”だ。外国人だから分からないだろうと相場の何倍もの値段を要求してくるヤツとは違う。しかし、はっきり言って僕は300ルピーだろうが500ルピーだろうが出せることは出せる。そもそもわずか数百円で色んなところに連れて行ってくれるんだから(しかもリキシャはドアがないのでスリル満点、アトラクションみたいで超楽しい。)かなりお得感を感じていた。言われた額を僕は出せるし、しかもその金額を受け取ったインド人が今日プチ贅沢をしてくれればwin-winではないか。「ぐぬぬ・・・」多分これは難しい問題だ。カーンはおそらく敬虔な、古い世代のムスリムだ。ガンジャはやらないって言ってたし、お金をだまし取ろうなんて考えはこれっぽっちも無いに違いない。というか駅のベンチでそのようなことも話していた。目の前の外国人に真摯に対応してくれるカーンは”いい人”だが、それは僕だけにとってだ。同じ街に住む他のインド人からしたらいい迷惑、ローガイなんて言われても否定できないのでは?でも僕には人の善意を遠慮するほどの強さは持ち合わせていない。ふう、仕方ない。僕は隣にいるその小さな老人に「Hey, I can trust you!(へへっ、俺ァあんたを信じるぜ!)」と声をかけた。満足気に頷くカーン。今日はこのおっちゃんに着いていこう。そう決めたら、今度はこの一帯に住むインド人全員をほんの少し裏切った気分になった。f:id:gaku-diary:20230313235919j:image