日記。

日々の徒然を書き留めてます。

インド旅行4-4

3/5(日)14:00〜
ダリット。誰しも一度は聞いたことがあるのではないか。インドのカースト制度の最下層どころか、その外側に位置する被差別民だ。長い歴史の中で不可触・不浄であるとされ、その総数は2億人いるとされている。
実はインドに来てからもちょくちょく目にしていたが、ちゃんと向き合って見たのはこれが初めてだった。5歳と、もう片方は10歳くらいかな?小さいほうの女の子は手にワイパーと洗剤を持っており、隣にいた車の窓を拭き終わったところだった。僕はその一部始終を見ていたが、車の窓が開くことは一度もなかった。左膝に感触を覚え顔を向けると、大きいほうの子が手を置き、身を乗り出して何か言っている。上手く聞き取れなかったが、十中八九マネー的な何かだろう。異様な距離感にほとほと嫌気が差すが、今は信号が青になるのを待つしかない。改めて少女の顔を見てみる。本当に、どこにでもいそうな顔だ。細い腕とボロボロの洋服。半分固まった鼻水は唇の下のほうまで垂れていた。汚いなあと思ったが次の瞬間、僕はあることに気付いて心底ゾッとした。何でこの子は鼻水を拭かないんだ?人間誰しも、赤ちゃんの頃はヨダレや鼻水で顔周りがぐちゃぐちゃしていただろう。しかし時間が経ちその成長段階で”人目”という概念を手にする。隣の人を鏡にして、身だしなみや清潔感を水準に合わせることで、人はその社会の一員になるのだと思う。パッと見た感じ、この子の年齢は小学校高学年くらい。日本ではだんだんマセてきて手首にシュシュを付け始める年代だ。そんな年齢の子が自分の鼻水に気付かないことなんてあるか?いいや。多分周りに指摘する人がいないから、自分で拭く習慣が身についていない。つまり、鼻水が出て、それが乾くまで放置することは別におかしなことではない。この子は、鼻水を拭くことを知らない。ダリットが差別されていて、屠畜や人糞の処理といった人の嫌がる汚れた仕事をさせられていることは理解したつもりでいた。でも・・・鼻水って、周りに誰もいなくても拭くもんだよね?一応、汚いモノではあるよね?ひょっとして、この浄・不浄の概念すらダリットにまで届いてないのか?いや、これはほとんど僕の憶測に過ぎない。ほんの3日前にインド到着したばかりのリキシャの相場すら知らないぺーぺーだ。ひょっとしたらあの子だってティッシュ以外で鼻水を拭きたくない主義の人なのかもしれない。それでも、この大勢が行き交う人口大国内でダリットの空間だけがガラパゴス諸島みたいに隔絶されているのは感じ取れた。また、ダリットの仕事は社会にとって必要不可欠なはずなのに、そこにいない者として扱える人間の恐ろしさにも僕は心底ゾッとした。生贄・・・ああだめだ、これ、感受性高いやつがインド行ったらだめだ。 
信号が青になり続々と周りの車が動き出す。僕を乗せたリキシャは少女に構わず発進。後ろからは何も聞こえなかった。f:id:gaku-diary:20230322070607j:image