日記。

日々の徒然を書き留めてます。

くぅ~、このワサビ、効きすぎるぜ。

12/6(火)
朝8時、自宅に到着。ベッドに飛び込みたい気持ちを抑えつつ、ノロノロと喪服に着替える。今日は祖父の49日法要だ。このまま家にいると寝てしまいそうなので準備が完了次第すぐに家を出た。パラパラと小雨が顔にあたり視界が悪い。あと寒い。
遺影や骨壷を運ぶのに朝の電車で向かうわけにはいかないので、僕ら兄弟以外は車で移動することになっていた。兄弟と仲の良くない僕は1人で先に出発し、着いた頃には母親たちが待ち構えていた。暖房の効いている寺務所でボーッとしていると兄と妹が到着。他の親族も続々と来た。祖父の兄弟と、甥っ子姪っ子たち。平均年齢がグッと上がる。それにしてもみな真っ黒だ。あと何回この服を着ればいいんだろう、祖父の形見である黒いネクタイを撫でて思った。
まだ少し時間があったので境内を散歩する。周りにあるのは財を成した一族のお墓だ。どれもこれも立派で、ここをドッグランにしたい気持ちがまた一層強くなった。てか、そんなことよりラブホ目立ちすぎだろ。墓参りとか普通家族でするものなのにお前。ラブホの管理人に文句言っても「うえぇ〜?知らないっスヨそんなん〜」ってムカつく顔で返してきそう。f:id:gaku-diary:20221208003706j:image

時間になり、〇〇閣(名前忘れた)に移動。お世辞にも広いとは言えないが比較的新しい建物だった。お坊さんが前に座り、お香の香りが部屋に充満する。どのような効用があるのかは知らないが、この香りを嗅ぐと気持ちが穏やかになるのは確かだ。
お経を唱え終わってお防さんが退室するとき、彼は振り返って僕らに色々話してくれた。あんま内容覚えてないけど、ひとつだけ覚えているのは今後祖父を悼むときはただ感謝の意を述べるだけで充分だということ。〜でありますように、のように何かを願うのはかえって”妨げ”になるらしい。ほうほう。良いこと聞いた。今まで何て思えばいいか分からなくて「どうか穏やかでありますように〜」とか願っていたけど、今後はそれで悩むことも無くなりそう。
それから僕らは料亭に行って、ゆっくりと運ばれてくる料理を口にした。あまりにゆっくりすぎたので恒例の箸袋折り紙はすぐに完成。数十分後、3番目に出てきたのは刺し身の盛り合わせだ。皿の隅にあるワサビを見て、僕は祖父のことを思い出した。生前に2人で飲みに行ったとき、祖父はワサビを食べられない僕のことをからかって、それはそれは楽しそうにしていた。・・・いや、本当に楽しそうにしていたな、そういえば。確かに僕は高校生になってもワサビが食べられなくて、同級生と比べたら舌の成熟が少し遅かったかもしれない。でも、本当はねおじいちゃん。実は俺、大学生になってから全然ワサビ食べられたし、なんならコーヒーだってたまにブラックで飲んでいたんだよ。きっと、祖父は僕にいつまでも可愛い孫でいてほしかったのだと思う。だから僕もあえて祖父の前ではワサビを避け、コーヒーには砂糖とミルクを付けてもらっていた。「ほら、お前、何でワサビつけないんだ。舌がお子ちゃまだから食べられないんだろう!見て、大将、わははは!・・・」頭の中で祖父の声が聞こえてきたが、今やもう演じる必要はないのだ。僕はいつもより多めにワサビをつけて食べた。くぅ~、このワサビ、効きすぎるぜ。f:id:gaku-diary:20221208003712j:image
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食事も終わり、最後は母、祖母、兄妹たちと祖父のお気に入りだった喫茶店に行った。コーヒーが特に美味しくて、駅から遠いにも関わらず客足の絶えない人気店だ。常連客だった祖父のことは店員皆が知っており、その死を深く悲しんでくれた。懇意にしてくれたから、と、店員のおばあさんが祖父の分のコーヒーを持ってきてくれた。「これは、〇〇さんがここぞという勝負の時に飲まれていたものです」。覗いてみると、吸い込まれるほど濃い色をしたコーヒーだった。その横にあるのは小さなグラスに注がれた炭酸水。どうやら交互に飲んでいたんだとか。不思議な飲み合わせをしていたんだなあと説明を聞いていたら、おばあさんが途中で泣き出してしまった。一瞬場が凍り、母も叔母もそれにつられるように涙を流した。胸が揺さぶられる。ああ、おじいちゃんはこんなにも多くの人に愛されていたのか。孫の1人として、それがたまらなく嬉しい。f:id:gaku-diary:20221208073542j:image