日記。

日々の徒然を書き留めてます。

これは相合い傘の要求サインだ。

11/23(水)

日々の出来事を書き表すための日記だが、現実世界の人間関係を優先しようとすると書ける内容に制限がかかってしまうことが多々ある。せっかくなので、元カノがいる時には書けなかった内容を書いていこうと思う。Tinderで出会ったMtFの方の話だ。

まず、MtFとは”Male to Female”の略で、男性の体で生まれたものの女性として生きることを望む人たちのことを指す。プロフィールには書いてあったのだが、脳死状態で右スワイプしていたのでマッチしてからそのことに気づいた。それに、写真に映っていた人はどう見ても可愛めの女性であり、とてもじゃないが男性として生まれたとはにわかに信じがたかった。これはさすがに気になる・・・。数回メッセージを交わしLINEに移行。後日2人で飲みに行くことが決定した。

いざ、決戦の日。その日は雨が降っており小寒い駅構内で彼女(彼?)を待っていた。「お待たせ〜!」と少し遅れて登場した彼女の声は高く、決して不自然さは感じられなかった。ヒール込みで身長は165cmほど。男性の中ではかなり小柄な部類と言えるだろう。そして何より、たわわに実る胸に僕は目を釘付けにされた。ここまでで判断すると彼女は充分女性であると言える。ただ、体格だけは変えられなかったのだろう。がっしりした肩幅や頭蓋骨はまさしくオスのそれだった。フリフリのワンピースの内側にあるのは、戦闘に向いている肉体だ。

居酒屋まで移動しようと傘を開こうとした時、それを遮るように彼女が自分の折りたたみ傘を手渡してきた。童貞でもわかる、これは相合い傘の要求サインだ。正味、異性として見るには全く興奮していなかったがここで空気を悪くしても面白くない。僕は傘を開き2人ちょうど収まるように差した。しかし、ここで彼女の口が開く。「ちょっと、もうちょいこっち!」と、傘を自分のほうへグイッと寄せた。ゲゲゲ!こいつ・・・。僕の右肩は冷たく湿っているが、これで彼女は完璧安全圏というわけだ。じゃあ最初から別々に差そうぜこのタコ!と言いたかったが、こういうことではないのだろう。彼女が欲しているのは雨でも濡れない服ではない。我が身を犠牲にしてでも自分を守ってくれる人の存在と、そう扱ってもらえるだけの自分だ。守ってもらいたい、大事にしてほしい。誰かの庇護を求める彼女の欲求はもはや抑えられないところまできている。少なくとも僕の目にはそう映ってしまった。(調べてみて分かったのだが、庇護の「庇」は「傘」を指しており、降りかかる災難から守る意味があるのだそうだ)

居酒屋に入るも、この時点で僕のテンションはダダ下がりだった。僕は人生が変わることを覚悟してラブホ街近くの居酒屋をセッティングしていたが、今やその立地も無用だ。しかし、まだ楽しみは残されている。失礼なのは重々承知だが、僕は性自認が肉体と一致しない人の話が聞いてみたかったのだ。僕だって自身がオス100%でできているとは思っていない。そういった、人前ではおおっぴらに言えない(昨今は違うのかな?)ことを深堀りし評価して、どう向き合うかを話したかった。

結論から言おう。彼女とはそういう話ができなかった。そもそも考えたことがないか、初対面の人間に話したくなかったのか、向き合ったことがなかったか。どこかマツコデラックス的な人を想定していた僕は、その点猛省するしかない。しきりに飲まそうとしてくる彼女を交わしつつ、割り勘で退店。彼女はタクシーで帰宅した。f:id:gaku-diary:20221127023451j:image

人はみな欲求を持って生きている。欲求は生きるエネルギーで、上手く発散する必要がある。もし、生まれ持った容姿や性別でそれが叶わない場合その人はどうなってしまうのだろうか。そう考えると、僕はつくづく運が良い。一体何を持って人を責められようか。雨上がりの夜風がひどく冷たかった。